虫はなぜ蓼を好きになったか

好きなものを好きと説明するのに140字ではとても足りない。

『僕の心のヤバいやつ』は終わっている

 まずはこれを見てくれ。
 『僕の心のヤバいやつ』33話の締めのページだ。

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33話

 

 私はこの編集によるアオリ「芽生える羞恥心……?」が本当に気に入らない。

 本当に気に入らない。

 的外れの頓珍漢であると思う。

 

 これからその理由について説明していく。

 

 漫画の内容が気になった人は公式サイトから読めるので先に読んでくるといい。

 ↓

僕の心のヤバイやつ 【最新2巻9/6発売!】 | 桜井のりお |無料マンガサイトはマンガクロス

 

 この記事のタイトルについても、批判の流れで言及するつもりだ。
 とにかく、この漫画について言いたい事が沢山あるので順を追って説明していこう。

 

 

 まず、この作品は中学二年の市川が山田を気にかけるところから始まる。

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1巻、1話 黒髪ロングが山田


 傍から見れば完全に「惚れちゃってるだけ」なのだが、市川自身は好きだとは思っていない。
 まあ、不器用系のラブコメだ。よくあるやつ。

 

 ところが、市川に対する山田の反応はこれ。

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1巻、1話

 完全に興味なし。こわいわ。よく惚れられたわ。

 

 物語の展開としては、ここから2人は少しずつ話すようになり、互いの理解を深めていく。

 だが陰キャで奥手の主人公は大したアクションも取れず、うまくいかない。

 よくある感じ。

 最近のラブコメとしては主流といっていい。

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1巻、1話 キョドる市川

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1巻、5話 隠れる市川

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1巻、8話 山田に近づく男を追い払いたい市川

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1巻、11話 ナチュラルに尾行する市川



 

 そうして1巻の終わりでようやく気づくのだ。

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1巻、14話 どんなシチュエーションやねん





 ここで、2巻の後書きを見てほしい。

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2巻あとがき


「人を好きになった時とその気持ちに気づいた時、初恋にはタイムラグがある」


 まあ、そういう話なのだ。
 市川が山田を好きになってから、その気持ちに気付くまでの話。

 それが『僕の心のヤバいやつ』1巻だ。

 

 これだけならただの凡作ラブコメと言っていい。
 だが、私が注目してほしいのはヒロインたる山田の方。

 

 市川だけでなく山田もこの1巻を通して市川への態度が少しずつ変化している。

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1巻、3話

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1巻、7話

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1巻、10話

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1巻、11話

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1巻、14話



 この作品通して、山田の心情が直接描写されることはない。

 そのため、山田が何を思っているかは類推するしかないのだが、こうして並べてみると表情とか距離感とかが変化していることがなんとなくわかる。

 

 1巻のあとがきで言っているのはこのことだ。

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1巻あとがき



 そして、この変化は2巻に入ると急にわかりやすくなる。

 

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2巻、16話 山田、めっちゃ来るじゃん

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2巻、18話 山田、表情豊かになったな

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2巻、22話 山田、目のハイライト増えた?




 断言していい。この時点で、山田も市川のことが好きになっている。


 だがおそらくまだ「気持ちに気づいていない」。

 だから友人たちの前でも平気で市川の名前を出したり手を取ったりする。

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2巻、24話 市川の名前を出す山田

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2巻、25話 市川の手を取る山田

 

 

 そしてこの頃にはもう気配がある。山田が「気持ちに気付く」のは時間の問題だと。

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2巻、25話 感情になる山田

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2巻、26話 市川の話に興味津々な山田

 そしてここ。

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2巻、27話 この顔

 「ダメか~~~~」じゃない!!!!!!!!!!!!!
 この顔を見ろ!
 気づいたでしょ!!
 今、気持ちに気づいたでしょ!!???

 

 ……いや、落ち着け。まだわからん。早とちりかもしれん。
 さっきも言ったがこの作品通して心情が描写されるのは市川だけ。

 山田の心の中は山田にしかわからないのだ。

 

 ちなみに山田は少し前にミルクティについて言及しており、このクリティカルなプレゼントには市川GJと言わざるをえない。

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2巻、25話



 そして、30話。
 2巻の最後。
 ついに、その時が来るのです。

 

 

 

 

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2巻、30話

 

 あっっ…………(目を閉じる)(この世の全てに感謝を捧げる)(鐘の音が響く)(花びらが舞う)(雲が割れ満天の青空が広がる)(主題歌のサビが大音量で流れる)(誰かがクラッカーを鳴らす)(戦争が終わる)(子供が車椅子から立ち上がり天を仰ぐ)(酒場では特別な酒とうまい料理が振るまわれる)(噴水広場に即席の音楽隊が結成される)(犬猫も立ち上がり踊る)(人々は夜を忘れ、連日騒ぎ明かすだろう)(この平和の世界で、誰にも邪魔されることなく、永遠に...)(fin.)

 

 

 

 

 

 

 

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2巻、30話

 

 

 2巻終了。

 ハッピーエンドじゃん。

 ハッピーエンドじゃん!!!!!!!

 

 

 

 つまり、2巻は山田が市川を好きになってからその気持ちに気付くまでの話だったのだ。
 1巻とは対照的に。

 

 この漫画はハッピーエンドで終わった。いい話だった。大団円だった。
 よもやあんな冷ややかな目の山田がこんな表情をするようになるとは。

 俺は満足した。金を払うだけの価値があった。あとパンフレットだけ買って帰るわ。

 

 

 

 

 

 

 なに? まだ終わってない?

 なに?
 3巻収録予定分がマンガクロスで連載中?

 

 

 

 ……いや、それはあれじゃん。エンディング後のおまけみたいなもんじゃん。

 夜は短し歩けよ乙女、読んだことあるか?
 あれなんかヒロインが気持ちに気づく直前で終わったけどハッピーエンドだったじゃん? で名作じゃん? 

 だからいいの。終わりで。

 


 じゃあ逆に聞くけどさ、この先どうするの?

 このまま話を続けて2人はどうなるっていうの?


 互いに気持ちに気づいた2人はギクシャクとラブコメを続けて、挙げ句の果てには進展しちゃったりするの?

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2巻、27話

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2巻、27話




 みたい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(手足をジタバタさせる音)

 

 いやほらバック・トゥ・ザ・フューチャーは完結したけどめちゃめちゃ人気がでたからPERT2とPERT3が作られたじゃん? それ。3巻はそれだわ。『僕の心のヤバいやつ2』。はじまったな。2はじまったわ。やったぜ。

 

 だって見てくださいよこの恋する山田の顔。最高かよ。

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31話 最高かよ。

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33話 最高かよ!!!!!!!!!!!!

 最高なんだよ。


 ここまで読んだ諸賢にはもうお分かりであろう。

 私がこのアオリが気に入らない理由。

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33話 例のアオリ

 「芽生える羞恥心……?」ではない。

 もう芽生えるとか芽生えないとかそんな段階ではない。

 山田はもうそんな次元はとっくに通り過ぎているのだ。

 

 そういうわけで、私はこのアオリが気に入らない。

 

 


 ちなみにここの市川のセリフに「こぼしたな」とあるが、実際には山田はこぼしていない。

 

 もう一度言うぞ。


 山田は市川のジャージにご飯つぶをこぼしていない。

 

 これがどういうことかわかるか?
 わからなければ33話をもう一度読め。

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 それでもわからない奴はよく聞け。
 ヒントは3つだ。
 ・米粒をこぼしただけでそこまで赤面するか?
 ・市川が図書室に来る直前、山田は何をしていた? 
 ・ジャージについた2つの米粒に見覚えはないか?

 

 理解したか。つまり、『僕の心のヤバいやつ』は最高だってことだよ。(終)

 

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